ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-829
松島一輝(新潟大・農),石間妙子(新潟大・自然科学),高野瀬洋一郎(新潟大・超域研究),関島恒夫(新潟大・自然科学)
新潟平野には、かつて広大な湿地帯が広がり、魚類等の多くの水生生物にとって好適な生息環境が存在していたと言われる。しかしながら、1964年からの大規模な圃場整備事業により、潟の埋め立てや水田水路の整備が施され、新潟平野の水田生態系は貧弱なものへと姿を変えていった。このような圃場整備事業の影響による水田生態系の悪化は、近年全国的にも急速に拡大しており、その保全対策が急務となっている。
水田生態系に依存する魚類は、生活史の過程で河川-水路-水田間を移動することが知られており、近年では水田魚道の設置や水路の段差解消等、圃場整備により分断された水系ネットワークを回復させるための対策が施されるようになってきた。しかしながら、効率的なネットワークの創出を図るためには、生物供給源の情報を考慮し、保全策を優先して実施すべきホットスポットを選定する必要がある。本研究では、そのような保全重点地域を選定することを目的とし、魚類を対象とした分布調査を流域レベルの広域な範囲で実施し、魚類の環境選好要因を明らかにするとともに、魚類量の分布予測を行った。
魚類調査は、新潟県燕市から新潟市を流れる西川流域の水田用水路にて、計71ヶ所のコドラートを設置し、2008年8月と11月に行った。環境要因は、局所要因として、コドラート内の水質や物理構造等を、景観要因として、落差工等の構造物の配置および非灌漑期の取水の有無を選択した。これら両スケールの環境要因が魚種ごとの生息密度に与える影響を評価するために回帰分析を行い、それをもとに、西川流域管内の魚類量の分布予測マップを作成した。本講演では、魚類分布予測マップから得られた効率的な自然再生のシナリオについて紹介する。