ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-833
*菅野洋((株)宮城環境保全研究所),平吹喜彦(東北学院大学・教養),蘇徳斯琴(内蒙古大学蒙古学研究中心),HAO Runmei(内蒙古師範大学地理科学学院)
中国内蒙古草原における荒漠化(砂漠化)は、人為的な作用による影響が大きな要因の一つであると考えられている。畑作と放牧の影響下にある草原域の一農村・武川県五福号集落(北緯41°11′42″, 東経111°34′24″; 海抜1615m)において荒漠化の現状を把握するため、土地利用と植物相(2007年と2008年の8月に実施)について調査し、それらの関連性について考察を行った。
居住地を中心とした1.2km×2.0kmの調査範囲の土地利用は、自然草地が19.7%にとどまったのに対し、畑地が63.9%と大半を占め、そのほかは居住地・路傍や植林地として利用されていた。また畑地の内部には小規模なガリーによる浸食が2箇所生じていた。
確認された維管束植物は38科139種で、そのうち木本が12種、草本が127種であった。わずかに残る草地には、典型草原の代表種であるLeymus chinensisやStipa kryoviiが見られたものの、草原の退行の指標となっているHeteropappus altaicuやArtemisia frigidaが優勢となって生育しており、過放牧による草原植生の劣化が進行していると考えられた。一方、人の活動が活発な居住地周辺・路傍では植生が失われ、表土がむき出しの状態になっている場所が多く、Saussurea salsaやPlantago asiatica、Portulaca oleraceaといった人里植物が点在していた。また畑地では一年生草本のFagopyrum tataricumやChenopodium aristatumなどの畑地雑草が優勢に生育していたが、これらの種は草地ではまったく見られなかった。