ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-836
*高野瀬洋一郎(新大・超域研究機構),石田真也(新大院・自然科学・学振DC),紙谷智彦(新大院・自然科学)
日本有数の水田地帯である越後平野は、かつて湿生植物が繁茂する大湿地帯であった。農地開発後に湿田を利用してきたこれら湿生植物のなかには、乾田化や除草剤の使用によって、地域絶滅に至った種もある。さらに、近年増加している多くの休耕田には、中生多年草群落が発達し、外来植物も多く定着している。本研究では、2年間にわたって休耕田で湛水管理と土壌撹乱を行い、1)湿地化後2年間で出現する植物の種組成の違いと、2)消失した植物と新たに出現した植物の生活型の違いを明らかにし、持続的な湿生植物群落再生の可能性を検討した。
湛水管理した新潟市大原(常時湛水)、丸潟(断続的湛水)、横戸(一時的湛水)では、5月に湛水を始め、直前には半面にロータリー耕と代かき処理を行った。これらの休耕田に1m×1mの植生枠を最低40個設け、出現した植物の種名を記録した。各休耕田には自記水位計を設置し、各植生枠の水深を測定した。
各植物種の出現頻度を因子とした休耕田の序列化の結果、各調査地における植物の種組成は、同一年内の土壌撹乱の有無よりも年間で大きく異なった。大原や丸潟では、1年目に出現した中生の一年草や越年草の大部分が2年目に消失し、コナギをはじめとした湿生一年草が優占する植物群落に移行した。一方、横戸の植物種の出現は2年間で類似し、様々な生活形に属する植物が繁茂する群落を形成した。また、湿地化2年目の湿生多年草の新たな出現および増加は、湿潤環境の継続に起因していると示唆された。湛水管理の方法と土壌撹乱の組み合わせに加え、湿地として維持する年数に配慮することで、休耕田に多様な湿生植物群落を再生することが可能であると結論づけた。