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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-852

エノキとクヌギの列状混植がオオムラサキ個体群に及ぼす影響

小林隆人(山梨県環境科研),中静透(東北大院),北原正彦(山梨県環境科研)


絶滅危惧種など希少な動物の保全を行っていくには,種の生存に必要な餌資源とその配置様式を科学的に調べた上で,餌資源を配置する必要がある。しかし,日本では,それらを把握した上で保全活動が行われているという報告が少ない。

生息個体数が全国的に減少しているオオムラサキは,多くの地域で保全活動の対象となっている。これらの活動では主に,幼虫の食樹であるエノキや成虫が樹液を好むクヌギの植栽が行われている。餌資源となる植物が植栽された後,本種が植栽木をどのように利用しているのかを評価することは重要であるが,そのような科学的な評価を保全活動に活用しているという報告は見当たらない。

そこで,オオムラサキの個体群を保全する目的で餌植物の植林を行う際の効果的な植林方法を明らかにするため,本種の保護を目的としてクヌギとエノキが交互に列状に植林された場所とその周囲の天然林で,エノキとクヌギの密度・大きさ,オオムラサキ幼虫の木当たり密度を調べた。植林区林内では枯死したエノキがある程度見られたが,クヌギの枯死は見られなかった。植林区のエノキのdbh(胸高直径)は周囲の天然林のエノキよりも有意に小さかった。しかし,植林区の林縁のエノキに限っては,dbhは林内のエノキよりも大きく,周囲の天然林のエノキと差がなかった。周囲の天然林においても,林縁のエノキのdbhは林内のエノキよりも大きかった。植林区のエノキにおける木当たり幼虫数は天然林よりも有意に少なかった。植林区でも周囲の天然林でも木当たり幼虫数は林内よりも林縁で有意に多かった。ただし,植林区の林縁のエノキにおける木当たり幼虫数は天然林の木当たり幼虫数と有意に異ならなかった。以上の結果から,本種を保護する際に効果的な植林方法を検討した。


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