ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-854
*吉尾政信(1)・加藤倫之(1)・田中 亘(2)・森田 弘樹(3)・齋藤 亮司(3)・宮山 尚也(3)・生玉修一(4)・三谷泰浩(5)・河口洋一(5)・宮下直(1) (1 東大・生物多様性,2 九州大学大学院工学府,3 (株)サンワコン,4 北陸農政局,5 九州大学工学研究院)
佐渡島ではトキの再導入が進められており,2008年9月には試験的放鳥が行われた.トキ個体群が存続するためには採餌環境の確保や整備が不可欠であり,佐渡の水田生態系を餌生物の量から評価し,自然再生計画を立案することが急務である.トキの餌生物としては,1年を通じて水田や水路に生息するドジョウと早春〜初夏に捕食可能なヤマアカガエル(ヤマアカ)が重要であり,秋にはコバネイナゴ(イナゴ)も利用可能と考えられる.本研究では,ドジョウとイナゴの個体数やヤマアカの卵塊数を水田の局所環境と周辺の景観構造で説明する統計モデルを作成し,局所要因と景観要因が与える影響を調べた.景観要因は影響する空間スケールが不明なため,GISを用いて調査地点から様々なサイズのバッファを発生させて景観要素を抽出し,AICを用いたモデル選択を行った.
解析の結果,ドジョウの個体数は局所要因だけで制限されることが明らかとなった.水田内の個体数は耕作田で少なく平野部で多かったが,季節を通じて一貫した影響を示す要因は検出されなかった.水路では底床中の泥率が高く,フルードの小さな水路で個体数が多いことが示された.一方,ヤマアカとイナゴでは局所要因と景観構造が影響し,それぞれ半径300mと600m内の景観要因を含むモデルが選択された.ヤマアカの卵塊は森林が約60%を占める環境に位置し産卵期に湛水されている水田で多く,イナゴは平野部の水田地帯に多産することが明らかとなった.以上の結果に基づき,トキの採餌環境の保全・再生を目的とした水田管理について言及する.