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ESJ56 シンポジウム S02-1

マクロスケールにおける鳥類の分布決定要因と生態的特性

*山浦悠一(森林総研),天野達也,楠本良延(農環研),永田尚志(国環研)


人間が地球規模での環境の変化を引き起こすようになったため、マクロスケールでの生物の分布の決定要因の解明は応用的にも重要な課題となってきた。生物の分布と生態的特性の関係を明らかにすることができれば、生物の分布とその変化の理解や予測、さらにはその重要性の認識に貢献できると考えられる。そこで、日本全域における森林性鳥類の分布を対象とし、生態的特性に注目して2つの研究を行なった。

日本では1970年代以降、森林の伐採活動が停滞し森林は成熟しつつある。したがって、若い林に生息する種の分布域は減少し、成熟した林に生息する種(成熟林種)の分布域は増加していると予測される。一方で、日本の夏鳥のうち多くが越冬する東南アジアの森林は、林業活動や農地の開発などによって大きく減少している。したがって、成熟林種のうち、夏鳥の分布域は減少する一方で、渡りを行なわない留鳥と漂鳥の分布域は増加していると予測される。自然環境基礎調査の二時期の結果を用いたところ、上記の予測を支持する結果を得た。土地利用の変化が生物多様性に及ぼす影響は、国土全域にまで及び、そして国境を越えて波及するだろう。

次に、自然環境基礎調査の一時期の結果を用い、成熟林種の種数、葉層で採食を行なう種の種数、果実食の種の種数に対する、土地利用、気候、地形の影響を検討した。後者の2タイプの種数は、森林性鳥類が有する2つの主要な生態的機能(植食性昆虫の捕食と種子散布)の量の指標となるだろう。3タイプの種数で結果は類似しており、気温の増加は温暖な地域で天然林の減少を通して種数を減少させていると考えられた。種数は気温が中程度の地域で最大となったが、これは生産性が比較的高く、天然林の減少が進行していないためだろう。現在および未来の生物多様性とその機能はこの地域に依存しているだろう。


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