ESJ56 シンポジウム S02-3
*宮脇成生(建設環境研究所),鷲谷いづみ(東大)
すべての種が本来の分布域以外において「外来種」となるわけではない。また、すべての外来種が、生物多様性や人間活動に深刻な影響を与える「侵略的外来種」となるわけではない。このような、導入先において「外来種」あるいは「侵略的外来種」として認識されるかの違いは、種の侵入段階の差異として考えることができる。
それでは、この種間における侵入段階の差異は、何によって決まるのだろうか。
本研究では、米国原産の維管束植物を対象に、これらの日本の河川域における侵入段階の種間差異は、原産地における分布特性の影響を受けるという仮説を検証した。ここで考慮した分布特性は、原産地である米国における1)農耕地における侵入、2)河川域・湿地の選好性、3)分布範囲である。
解析においては、米国原産の植物種を、日本の河川域への侵入の程度により、侵入段階を0〜IVの5段階に分類した。この侵入段階に対する原産地における分布特性、すなわち雑草ステータス(農耕地の強害雑草となっているか)、ハビタットのタイプ(河川域・湿地をハビタットとするか)、分布範囲(米国における分布州数)の与える影響について、比例オッズモデルにより解析した。なお、対象とした外来種は、日本に非意図的に導入された種のみとし、意図的に導入された種は除外した。
解析の結果、雑草ステータス、ハビタットのタイプ、分布範囲のいずれもが統計的に有意であった(いずれの変数についてもp < 0.0001であった)。また、侵入段階IVまで到達した7種はすべて、農耕地の強害雑草であり、河川域・湿地をハビタットとする種であった。
以上の解析により、原産地の米国の農耕地において強害雑草であり、河川域・湿地をハビタットとし、米国において広く分布している植物種は、非意図的な導入により日本の河川で侵略的外来種となる可能性の高いことが示唆された。