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ESJ56 シンポジウム S11-3

森林樹木と生態リスク -保全遺伝学の視点から-

津田吉晃(森林総研・森林遺伝)


森林伐採、過度の開発、大気汚染や気候変動などにより世界中で森林の多様性が脅かされており(Ledig, 1988; Geburek, 1997; Newton et al., 1999)、近年、多くの樹種が保全の対象として着目されている(Newton et al., 1999)。そして今日、生物多様性の基盤となる遺伝的多様性の保全の必要性が広く認識されている(Cavers et al., 2003)。樹木は長命であり、集団内の遺伝的多様性が高く、花粉および種子を介した遺伝子流動能力も高いため、環境変化による集団の消滅および遺伝的多様性低下には耐性があるという総説もある(Hamrick 2004)。これは樹木の遺伝的多様性保全における生態リスクの影響は小さいことを意味するかも知れない。しかしこの仮説に当てはまらない事例も多い。本発表では特に、1)森林の分断化、2)地球温暖化による分布シフト、3)遺伝子組換え対象樹木の安全性評価および4)樹木の種苗配布区・保全単位の提案に着目し、各項目について森林樹木およびそれを取り巻く生態系へのリスクについて保全遺伝学の視点から議論する。具体的には、各項目に当該する既報の研究事例を紹介および総説する形式で行う。


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