ESJ56 シンポジウム S15-1
中静透(東北大学大学院生命科学研究科,生物多様性総合評価検討委員会)
生物多様性の総合評価は、環境省が設置する「生物多様性総合評価検討委員会」により平成20年度から開始された。今年度と来年度の2ヵ年をかけて、日本の生物多様性の状況を把握するための指標の開発とそれらを用いた総合評価を行う。今年度は、指標を開発するための枠組みの整理、これに沿った指標の検討を行った。
日本の生態系を大きく6つに分けて(森林生態系(山岳を含む)、農地生態系(里地里山を含む)、都市生態系、陸水生態系、海洋・沿岸生態系、島嶼生態系)、それぞれの生態系における指標を検討した。また、これら各生態系を横断して、第3次生物多様性国家戦略に示された第1の危機(開発や乱獲の影響)、第2の危機(里地里山などの手入れ不足の影響)、第3の危機(外来種などの持ち込みの影響)、及び地球温暖化の危機の観点から指標を検討した。検討にあたっては、国際機関等による指標の開発に使われているDPSIRフレームワークなどを用いた。
こうした枠組みの整理と指標の洗い出しにより、当初、およそ150の指標の候補が挙げられたが、委員会での検討の結果、生物多様性条約の2010年目標にも適用可能で、また日本の生物多様性の状況をよく指標するものとしておよそ30の指標案が開発された。本シンポジウムでは、これを中間とりまとめとして報告する。
今後、本シンポジウムを契機として、広く専門家からの意見を取り入れ、指標案の熟度を高めるとともに、これに対応するデータの整理・収集、解析などを追加的に行って指標を確定する。また、国内外の専門家等との意見交換・査読などを経て、これら指標を用いた評価報告書をとりまとめる予定である。