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ESJ56 シンポジウム S17-2

ツキノワグマ絶滅危惧個体群における学習放獣と効果検証

横山真弓(兵庫県立大学)


西日本におけるツキノワグマは、地域的な絶滅が危惧されている個体群が多い。一方で、人里への出没などが発生すると、直ちに捕殺への要望が高まる。そのため、出没被害の軽減と個体群の回復という両立困難な保全管理の課題を持つ。このような課題を抱えた個体群にとって、学習放獣は、再被害の低減と人為的死亡率の低下が期待されるため、保全を進めるための選択肢の一つとなる。しかし、学習放獣の効果を検証した事例は、国内のツキノワグマではほとんどなく、科学的な根拠が乏しい手法でもあった。また、保護管理計画策定の場で、学習放獣の合意が得られても、現場では放獣場所の選定や地域住民の理解を得られず、導入できない事例が相次いでいた。

この状況の下で、兵庫県は被害軽減と絶滅回避を目標として、2003年に保護管理計画を策定し、学習放獣を柱とする出没対応を導入した。本発表では、計画施行から6年間で実施した放獣事例及び事後追跡による効果の検証作業を例として、ツキノワグマの出没対策とモニタリングの頑健性を向上させるための取り組みについて議論する。

計画スタート時は、学習放獣の効果について、現場での説明責任を十分に果たせない状況であったが、放獣後のモニタリングを随時地元に報告し、毎年の結果を現場に報告することを繰り返した。その他、目撃情報の収集に努め、対応の選択、事後検証、その後の対策などに活用した。その結果、6年間でのべ154頭が捕獲され、のべ140頭を放獣した。この間3度の大量出没が含まれるが、捕殺処分は18頭にとどまった。事後追跡は、加害個体を中心に63頭について行った。事後追跡では、十分な科学的なデータを得られないなど課題が多かったが、地元追跡、夜間追跡、GPS首輪の導入などデータの頑健性を高める努力を行った。今回は特にGPS首輪による20例の追跡結果をもとに行動特性と効果判定方法の現状について報告する。


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