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ESJ56 シンポジウム S20-7

種子捕食者の選択的資源利用と森林の種多様性

*島田卓哉(森林総研・東北), 高橋明子(京都大学・院・農)


植食者による採食が森林の群集構造を変化させ,森林の種多様性にプラス・マイナス両方向で影響することは広く認められており,理論・実証両面からの研究が進められてきた.植食者が森林の多様性に影響を及ぼすメカニズムとして,代償的採食,頻度(密度)依存的採食,採食強度のマイクロハビタットスケールでの偏り,選択的資源利用,採食に伴う撹乱,植食による植物の生理的形態的変化がもたらす種間競争の強化/緩和などが提唱されている(Huntly 1991).中でも,森林の種多様性維持に種子捕食が及ぼすメカニズムとしては,Janzen-Connell仮説がよく知られている(Janzen 1970; Connell 1971).しかしながら,Janzen-Connell仮説は種特異的な消費者を前提とした密度依存的死亡(あるいは距離依存的死亡)を想定しており,ジェネラリストである種子散布捕食者の効果に適用することは適当ではないだろう.これらのジェネラリスト種子散布捕食者の効果を考える場合に重要になるメカニズムは,選択的資源利用であると考えられる.選択的資源利用が森林の種多様性の維持に寄与する可能性は,これまで主に果実ー鳥類種子散布系の研究において示されてきた.本発表では,これらの研究事例を紹介し,次いで貯食散布種子について話を進めたい.コナラ属樹木はその生活形が極めて類似しているにもかかわらず,その種子(堅果)はサイズや化学成分の点で非常に多様である(Shimada & Saitoh 2006).種子形質の多様さが,種子散布捕食者の作用を介して,種多様性の維持と関連しているのではないかという視点から研究が行われている.それらを検討し,種子散布捕食者の作用が森林の種多様性にどのような影響を及ぼし得るのかについて考察を行いたい.


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