ESJ56 シンポジウム S23-1
島谷幸宏(九大・院・工学)
佐渡では平成20年9月に10羽のトキが試験放鳥され,平成27年までに60羽定着を目指して野生復帰の計画が進んでいる。環境省地球環境研究総合推進費、「トキの野生復帰のための持続的な自然再生計画の立案と社会的手続き」2007−2009年度、研究チームは、トキの野生復帰に向けて「自然的および社会的に持続的で実現可能な佐渡島の自然再生計画」を立案し定着させることを目的に,自然科学系から人文・社会科学系にいたる分野横断的な研究を実施している。
具体的には、以下の5項目について研究を実施している。トキの餌場および営巣環境の現状を調査し、佐渡島における餌資源量および営巣環境を評価するポテンシャルモデルの作成。
1.水田の管理手法の改善、江と呼ばれる水田沿いの素堀水路の設置、河川と水田の連続性確保のための魚道の設置など環境改善手法の提案とその定量的な評価
2. 放鳥トキの採餌、営巣などの生態情報の収集と分析
3.中国野生トキの生息環境及び生態情報の調査・収集
4.1.〜4.の結果を踏まえながら地域の関係者との合意形成過程を経た、自然再生計画の立案とその社会的定着
本研究の特徴はトキの野生復帰という現在進行中の課題を取り上げ、生物系、工学系、人文系の研究者が連携し、単に研究で終わるのではなく研究で提案する自然再生計画を現地に実際に定着させる点にある。したがって、関係機関や住民との連携は必須であり、佐渡市との研究協定をはじめ、地元住民も参加する加茂湖水系再生研究所の立ち上げ、談義所(ディスカッションをする場所)の設置など、様々な形での社会連携を図りながら研究を実施している。