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ESJ56 企画集会 T08-5

河川敷や砂州の物理・化学特性の変化と藪化・樹林化メカニズム

浅枝 隆(埼玉大大学院)


頻繁に冠水する河川敷や砂州は、土壌の粒径が粗く、植物の生長にとって水分や窒素分が律速する。ところが、洪水時に、こうした場所が水没すると、水深が浅いために流れが弱くより細かい土壌が堆積する。そのため、砂州の比高は高くなり、冠水頻度は減少、より水に弱い種の侵入も可能になる。特に一旦草本類の群落が形成されると、細粒土砂の捕捉は加速度的に進展し、水分や窒素分が豊富になるため、植物群落はさらに密になる。また、砂州の比高が上昇することは、樹木の流失も少なくなる。

ダムからの排砂によって、この過程が短期間に進展した黒部川、砂州の比高が高いために比較的ゆっくりした遷移が進行している荒川、クズと外来種との間で遷移を繰り返している多摩川において観測を行った。

黒部川においては、草本類バイオマスと、排砂によって礫州上に堆積した砂層厚、摂取できる窒素量、水分量との間に顕著な相関がみられた。さらに、窒素固定細菌と共生するアキグミの生長を促進させていることが得られた。また、荒川砂州においては、土壌粒径によってツルヨシのバイオマスおよび形態に顕著な差が得られた。多摩川においてはクズとアレチウリ群落の発達域と土壌窒素濃度との間に特に高い相関がみられた。

さらに、2007年9月に生じた洪水前後に荒川砂州で全樹木調査を行った。その結果、洪水時における樹木の流失は樹木個体ごとに生ずるのではなく基盤の流失によって生ずること、また、比高の上昇で基盤が流失しにくくなっていること、さらに、樹木自体、柔らかく容易に屈曲することで流失しにくくなっていることが明らかになった。

以上より、樹林化の要因には、土壌の堆積によって、比高の増大、土壌改変による生長促進、さらに、樹木の流失減少が大きく関係していることが示された。


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