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ESJ56 企画集会 T15-2

伊豆諸島のその周辺本土におけるヤマガラの集団構造

*藤田薫(東邦大・地理生態),西海功(科博),山口典之(東大・農・生物多様性) ,樋口広芳(東大・農・生物多様性)


伊豆諸島には、固有種、固有亜種の鳥類が生息している。伊豆諸島は、噴火という大規模な環境変動がたびたび起こっている地域であり、このような地域では、島間での移動や分散が、これら固有種、固有亜種の個体群の維持に影響している可能性がある。そこで、伊豆諸島での島間の遺伝的交流の程度を明らかにするために、諸島内に複数の亜種が分布しているヤマガラParus variusを対象に、遺伝的集団構造を調べた。

伊豆諸島にはヤマガラが3亜種分布している。そのうちの2亜種、オーストンヤマガラP. v. owstoniとナミエヤマガラP. v. namiyeiは、伊豆諸島の固有亜種であり、レッドデータではそれぞれ絶滅危惧II類とIB類に指定されている。最も北に生息している亜種ヤマガラP. v. variusは、本土と同じ亜種である。3つの亜種は、南の亜種ほど体サイズが大きく(Higuchi 1976,Yamamoto & Higuchi 2004, Yamaguchi 2005)、顔や胸の色が濃い(Yamaguchi 2005)。また、一腹卵数(樋口&長谷川 1985)や育雛期間(Higuchi & Momose 1981, Yamaguchi & Higuchi 2005)などの生活史形質にも違いが見られる。しかし、ミトコンドリアDNA(コントロール領域・チトクロームb・COI)の塩基配列分析では、亜種間での変異はほとんどなかった。そこで、より変異速度の速いマイクロサテライトの分析によってこれら3亜種の遺伝的集団構造を調べ、遺伝的分化の程度、遺伝距離、遺伝的多様性などから、亜種が形成された過程を推定する。


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