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ESJ56 企画集会 T20-4

生物多様性と生態系サービスの経済評価の課題

大床太郎(森林総研),吉田謙太郎(筑波大・工)


近年,生態系サービスという概念が,自然科学・社会科学を問わず定着しつつあり,その社会科学的な評価の事例が頻出している.環境の経済評価では,生物多様性条約を契機として,生態系サービスの経済学的評価の重要性が認識されつつある.

生態系サービスの経済評価には,多属性評価と受動的利用価値の検討が重要となる.生態系は多くの要素で構成されていることから,生態系は複数の側面から評価すべきである.加えて,生態系を経済評価するためには,市場に十分に反映されていない「受動的利用価値」(生物の存在価値など)も考慮しなければ,過小推定になってしまう.

さらに,生態系サービスは,今まで別個に発展してきた生態学と経済学を融合させ,生物多様性保全を実行可能にするアプローチとしても考えることができる.生物多様性保全が未だに十分になされていないことは,人々が有している生物多様性保全価値の明確化が問われていること,生態系サービスアプローチが生物多様性を保全するために開発されたことは,生物多様性保全の評価を受動的利用価値も含めて行うことが喫緊の課題であることを示している.

生態系サービスアプローチには,環境の経済評価の1手法である,コンジョイント分析が有用である.コンジョイント分析によってなされる多属性評価は,生態系サービス評価も,生物多様性保全の受動的利用価値の評価も可能である.

本報告では,生態系サービスと生物多様性の経済評価について整理し,そのコンジョイント分析を提案する.また,経済評価を現場で遅延なく実施するために必要とされる,「便益移転」という概念を紹介する.その上で,現在行っている,生物多様性保全のインターネットアンケートを用いたコンジョイント分析に触れる.最終的には,生物多様性を保全するために,生態系及びそのサービスのどの要素に注目し,保全施策のターゲットを設定するかに関して検討したい.


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