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ESJ56 企画集会 T24-1

生態学は社会教育にどうせまる? 〜自然史系博物館の役割〜 

*金尾滋史(多賀町立博), 佐久間大輔(大阪自然史博)


博物館や博物館行事には実に様々な人が様々な目的で集まってくる。展示を見るために来館する人もいれば、生き物の名前を教えてもらうために来館する人もいる。また、ヘビーユーザーになると、ボランティアなどで博物館で自分の能力を発揮する活動を行ったり、アマチュアとして研究をする人もいる。学校教育での生態学の展開がけして十分でない現在、老若男女を問わず、生態学に触れる窓口として社会教育は重要な回路であり、その窓口としての博物館の存在は重要だ。

自然史系博物館では館内での活動にとどまらず地域の公民館や老人会、学校など各地域に出向き、観察会、展示を実施してきた。生態学との結びつきが濃いものから薄いものまで様々ではあるが、学芸員の生態学研究が基礎となり、身近な生物や地域の自然環境を考えていく上でのヒントを地域住民に伝え、視点を与えている。多賀町立博物館で実施している大人向けの生き物連続講座や大阪市立自然史博物館の生態学をテーマとした展示室もそのような活動の一環であり、各博物館の友の会やサークル、研究会などの活動にも成果としてあらわれている。何よりも生態学教育活動がアマチュアという人材を育成し、博物館の調査研究や資料収集、展示が相乗的に発展していることが重要である。

生態学教育活動を学生・生徒だけでなく、より広く、より地域住民にむけた分かりやすいものにしていくために、生態学と社会教育の仲人として、博物館や学芸員が果たす役割は今後大きくなってくるといえよう。博物館にとっては、生態学が社会教育へ展開することで、多様な博物館ユーザーをさらに博物館へ引き込むためのツールの一つにすることができる。市民、生態学会、博物館の「三方よし」の状態を実現することこそが生態学教育を社会教育へアプローチしていくための博物館の醍醐味といえるだろう。


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