ESJ56 企画集会 T26-3
永幡嘉之(日本チョウ類保全協会)
山形県のチョウセンアカシジミは県の天然記念物に指定されているが、地域個体群の縮小が進んでいる。1986年の調査結果をもとに、2005年に生息状況を調査した。その結果、約20年間で食樹トネリコの半数以上が消失し、必然的にチョウセンアカシジミも大きく減少していること、同時に局所個体群の孤立が進行していることが明らかになった。
ミトコンドリアDNAの解析により、山形県内でも地域個体群ごとに遺伝的分化が始まっていることが明らかになった。保全のために移植が行われてきた経緯があるが、地域個体群をまたいだ移植は行うべきでない。
また、同一の地域個体群内であっても、局所個体群ごとに、ミトコンドリアDNAのハプロタイプの頻度構成に差がみられた。これは、生息地の孤立と分断が進んだ結果、近年になって人為的にもたらされた現象である可能性が高い。
以上の調査結果をふまえ、今後の保全対策について論じたい。