ESJ56 企画集会 T26-6
林田光祐(山形大学農学部)
地球温暖化をはじめとする環境問題への関心が高まるにつれ、身近な自然を取り戻そうと里地里山の再生活動や絶滅危惧種・希少生物を保全する活動が全国各地で始まっている。このような保全活動の拡がりは歓迎すべきことであるが、場合によっては不適切な活動になってしまうおそれもある。それを未然に防ぐ鍵を握るのが研究者や専門家の活動への参加とその関わり方であろう。
山形県鮭川村はギフチョウとヒメギフチョウが混生する重要な生息地のひとつであるが、近年その発生数が減少傾向にあるため、村をあげて保全活動が始まった。2008年5月上旬に全国チョウ類保全シンポジウムが鮭川村で開催され、これをきっかけに私の研究室では鮭川村をフィールドとしてギフチョウ類混生地の保全に関する研究を始めた。その目的は、ギフチョウ属2種の最適な生息環境(産卵・幼虫成育環境)を明らかにして、今後の保全活動の指針とすることである。そのために、まず両種の食草の分布とその生育環境を把握した上で、両種の生息分布と生息密度を調べ、食草の個体密度などの生育状況がどの程度両種の生息密度を決定しているのかを明らかにしたいと考えている。
まだ始めたばかりで十分な成果は紹介できないが、この企画集会では、これまでの研究の計画・実行の過程を具体的に紹介しながら、このような連携を行う研究者の利点や課題を整理して提示する。そこから地域の保全活動と研究者との新たな連携につながることを期待したい。