ESJ56 企画集会 T29-1
夏原由博(京都大学)
2001年から2005年までの間に実施された国連ミレニアム生態系評価(MA)は、95カ国から1360人以上の専門家によって作業がなされ、地球温暖化IPCCに匹敵するような生態系に関する最初の世界的規模の総合評価として成果を上げた。MAの中で世界の34地域でサブグローバル評価(SGA)が実施されたが、日本は含まれていなかった。そこで2007年より国連大学高等研究所が事務局となり、CBD/COP10への貢献を視野に入れた、日本におけるSGAの取り組みを開始した。日本のSGAの特色として、里山里海に焦点をあて、生態系管理に関する伝統的知識を将来世代に引き継ぎ、自然資源の持続可能な利用を国際コミュニティに紹介することと、評価のプロセスを通じて研究者と政策立案者の協力を強化することが期待されている。しかし、里山里海が現代の持続可能社会とモデルとなり得るのか、我が国の特殊な社会・環境システムとも言える里山里海を国際的に通じる言語で翻訳可能なのか、里山里海を含めた我が国の自然資本と生態系サービスを評価するための指標は何なのか、十分明らかにはされていない。本集会では、生物多様性と生態系サービスや人間の福利との関係を明らかにする日本のSGAの成果を地域で活かし、世界へ発信する上での方法、期待と問題点を議論する。