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ESJ56 企画集会 T30-3

平野部農村地域に残存する線状生育地における草原性植物の分布状況

小柳知代(東大院・農)


生育地の消失、分断化が進行した平野部の農村地域において、半自然草地に典型的な植物相を保全していくためには、現在の生育地の分布状況を把握した上で、残された生育地を今後の保全、再生計画における重要な構成要素として適切に位置付けていく必要がある。近年、畦畔や法面など農用地に隣接する刈取地に成立した半自然草地に注目が集まり、管理の継続性がある程度保障された線状の生育地として、その重要性が指摘されている。こうした農用地沿いに成立した刈取草地と同様に、今後の管理の継続性が保障されている線状の生育地として、道路沿い林縁部に成立した刈取草地が挙げられる。関東地方平野部の筑波稲敷台地には、かつての茅場や採草地の分布域の一部に、現在、管理放棄され遷移の進んだ樹林地が残されている。これら樹林地の道路沿いでは、道路管理を目的とした草刈が行われており、結果として、林縁部に草原的な環境が成立している。本研究では、こうした道路管理を目的とした草刈によって成立した道路沿い林縁部刈取草地という線状生育地における現在の草原性植物の生育状況を、長期的に維持管理されてきた面的な半自然草地と比較することで明らかにした。また、現在の林縁部における草原性植物の生育状況と、明治期以降の土地利用および景観構造の変化との関係を検証することで、過去の人間活動による影響を明らかにした。その上で、林縁という線状の構成要素がもつ草原性植物の生育地としての機能と、地域における草原性植物相の保全、再生を考えていく上での位置付けについて考察を行った。


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