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ESJ56 企画集会 T31-4

光合成関連データの意義とデータベース化での問題点

石田厚(森林総研)


光合成速度などの生理的な値は、光、温度、栄養塩、水といった外部要因や、環境変化に対する馴化や個体の齢やサイズといった内的な要因によって、大きく変動する。従って、パラメータの値を固定しがちなデータベースの構築は、生理パラメータに関しては今まであまり進んでこなかった。しかし、将来の地球温暖化による植物や生態系の応答をモデリングする必要性や、生理生態以外の分野で既に構築されつつデータベースと生理パラメータとの関連性を示していくことは、生理生態の研究分野への重要な要請になりつつある。

1990年代に入ってPB Reichらによって、様々な植物種間で、最大光合成速度と、葉内窒素含量や葉寿命、LMA(leaf mass per area)との相関が、様々なバイオーム間で比較され、炭素や栄養塩利用に関したトレードオフの関係が提唱されてきた。また2000年代に入って、様々な植物種間で、最大光合成速度と、葉の水ポテンシャルの最低値や材密度との間にも相関があり、水利用に関わるトレードオフの関係の存在が示唆されてきている。材密度やLMAはリターの分解速度にも関わるパラメータであることから、様々な植物パラメータを蓄積していくことは、植物の資源利用特性を統合化していくばかりでなく、物質循環などの生態系の機能と個体の生理反応とを結びつけていくことにつながる。

従って様々な光合成関連パラメータのデータベースの構築は、今後の生理生態分野の発展や他分野への必要性のアピールとして、今後重要な作業になってくるであろう。そこでここでは、熱帯や亜熱帯の植物種の具体的なデータを用いて、1.様々な植物種間での、光合成、水利用、栄養塩、防衛系などのパラメータとの相互関係、2.光合成や水、栄養塩利用の個体サイズ依存性の例を紹介し、光合成関連パラメータのデータベース構築の必要性と方法的な問題点の提案を行っていく。


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