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ESJ57 一般講演(口頭発表) C2-03

北極圏・南極圏の極地植物群落における種分布微地形の定量評価

*奥田将己(融合研),伊村智,神田啓史(極地研),種村正美(統数研)


植生の一次遷移を論じる際には、局所的な環境条件を考慮することが非常に重要である。しかし現実的な調査の手間や計測精度との兼ね合いで、考慮する必要のあるスケールに対する十分な情報が蓄積されておらず、裸地で植物の定着が成されやすい場所の評価は定性的な段階に留まっていることが多い。定量的な評価ができれば、特殊な条件に対する植生の反応を研究する際に環境補正が可能になり議論の対象が絞り込めるため、その必要性は高い。

そこで局所環境を一般化する操作のひとつとして、植生の北限・南限に近い場所で個体サイズの小さな植物の分布に対して地形属性との対応を表記することで、比較的早い遷移段階での植生定着に有利な地形の形状の量的な評価に通じる研究を行った。調査では地盤の安定した場所に設置したプロット内で、格子グリッドの中央の比高と植生のデータを取り、比高データを用いて各々のグリッドの地形属性値も定義した。その地形属性値を種分布のモデルの説明変数として用いることで、分布場所の形状の定量評価を試みた。なお、事前の変数絞り込みの段階では、地形属性値を順序尺度で用いた上で種の分布との対応関係を見た結果も用いた。

南極大陸沿岸の蘚類群落の場合では、4m四方のプロットに20cm四方のグリッドを用いた際、プロット全体から見た凹部分における局所的な凸部に分布している傾向があることが示された。また全体から見た凹凸を定義する際には、高次の回帰より低次の回帰、最小二乗法よりロバストな方法を基準面の設定に用いた場合に、凹部への分布傾向がより強まっていた。

本発表では、上述の状況を南極のプロットで出現した蘚類2種の生態的位置付けも交えながら読み解いていき、更に異なるスケールで調査を行ったノルウェー・スヴァールバル諸島の氷河後退域の植生へもアプローチしていく。


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