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ESJ57 一般講演(口頭発表) C2-05

葉形質の全球的変化傾向とその適応的意義

*菊沢喜八郎(石川県大),小野田雄介(マコーリー大),Wright, I. J. (Macquarie Univ.)


Wright et al (2005)は、葉寿命(L)の全球的変化傾向が常緑性と落葉性とで異なることを見出した。(1)Lと年平均気温(MAT)との関係において(1-1)常緑性の種ではMATが低いほどLが長くなるが、(1-2)落葉性の種ではMATが高いほどLが長い。また、Lと葉面積あたり重量(LMA)との間には正の相関があるがその(2)回帰係数はMATが高いほどゆるやかになる。

これら諸傾向に対する適応的意義の考察はいまだなされていない。我々はこのような諸傾向は個体の光合成生産最大化モデル(Kikuzawa 1991)から導き得るのではないかと考えた。もし同じ傾向が導かれたならば、それらは適応的意義を有するという推測を支持することになるだろう。

まず、fはMATによって決まり、MATとLとの関係はfとLの関係として置き換え得ると考えてみた。fが積算温度のみで決まるとするモデルではfはMATによって95%以上説明できる。またfがMATと蒸発散量の両者で決まるとするモデルでもfはMATによって65%以上説明できる。次に直接fとLの関係を吟味した。LとMAT間で見られた関係はLとf間でも見られるようであった。最後にLとf間で見られた傾向が最適モデルを用いたシミュレーションで再現できることを示した。

以上から常緑性植物はMATが下がりfが短くなると少ない炭素獲得を補うために葉寿命を延ばすが、落葉性植物は葉を越冬させることはできないためfの減少と共に葉寿命も低下する。これが傾向(1)をもたらす。傾向(1)の結果、Lの最大値と最小値の幅はfが長くなるとともに小さくなり、これが傾向(2)をもたらすと結論した。


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