ESJ57 一般講演(口頭発表) F1-12
*近藤慶一(名城大・院・農学), 松本和馬(森林総研多摩),日野輝明(森林総研関西), 新妻靖章(名城大)
里山林は管理施行によって,様々な森林環境が存在し,そこに生息している生物の種多様性を高く維持しているといわれている.一般的な里山林に関する知見は「高度経済成長期以降,薪炭の需要低下を原因とした里山林の面積の減少や放置林化が里山林に生息する生物の種多様性の減少をもたらす」というものであり,保全の視点からその管理施行の重要性を指摘する意見は多い.しかしながら,里山林に関する研究の多くは下草刈り,落ち葉掻きなどの林床管理の影響を評価した例が多く,皆伐による管理の影響を調査した例は報告されていない.
本研究の調査地である兵庫県猪名川町の里山林は池田炭の産地として知られており,現在でも皆伐による里山林の管理が行われ,様々な林齢の森林が存在している.演者らは,皆伐による里山林管理がオサムシ科甲虫の種多様性に与える影響を明らかにすることを目的として,2007年〜2009年に薪炭管理林(皆伐後1年目,3年目,7年目 ※2007年時点 ),薪炭放置林,アカマツ放置林の3つの調査区において, ピットフォールトラップを用いてオサムシ科甲虫の採集を行った.
その結果,採集されたオサムシ科甲虫の種数は薪炭管理林で最も高い値を示した.薪炭管理林の各年次における個体数及び種数の年変化をグラフに表すと,種数は皆伐後1年目から2年目に年次が経過すると上昇し,3年目から5年目まで高い値を示したが,8年目から9年目で減少した.また,DCA(除歪対応分析)による解析の結果と採集結果から,薪炭管理林で特徴的な種が多く存在していた.
従って,皆伐を行なう里山林管理は皆伐後の2〜5年目の比較的初期の年次において薪炭管理林に特徴的な種の多くが採集されることによって,オサムシ科甲虫の種多様性が高まると考えられる.