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ESJ57 一般講演(口頭発表) F2-10

大学博物館における植物パラタクソノミスト養成講座の現状と課題

*持田 誠(北大・総合博), 加藤ゆき恵(北大院・農・植物生態体系学)


北海道大学総合博物館では、2004年からパラタクソノミスト養成講座を開講している。本報では、植物分野のパラタクソノミスト養成講座の内容と現状を紹介し、当講座の生態学教育における意義、問題点と展望などについて報告する。当講座の示す「パラタクソノミスト」とは、学術標本・サンプルを正しく同定し整理する能力を有する者で、分類学、生物多様性研究、環境アセスメント、環境教育の専門家をサポートする、環境調査・教育において必要とされる人材と定義している。講座は一般に初級・中級・上級に分かれており、初級は初心者向けの基礎、中級は、初級修了者および経験のある一般市民(学芸員、環境調査専門員などを含む)を対象、上級は中級修了者を対象の専門的な講義とされているが、内容や体系は分野ごとに分かれている。植物分野は当講座初年から毎年開講しており、これまでに「植物初級」「植物中級:スゲ植物」「植物中級:イネ科植物」「植物中級:シダ植物」「植物中級:水草」「コケ植物初級」「きのこ初級」を開講している。開講当初は中級講座のみだったが、受講者からの要望もあり、3年目から初級を開講した。一方、今日まで上級講座は開講されておらず、他分野に比べて体系的になっていない。実習室や設備の面の制約から、1講座は10〜12名程度の定員だが、受講希望者が年々増大し、抽選や選考で毎回多数の落選者を出している。一方、受講者数と共に受講者の相が拡大してきており、主催者の想定するレベルと実際の受講者が期待している内容の間に、さまざまな隔たりが生じてきている。元々、専門家をサポートするパラタクソノミストを養成する目的だった講座が、近年の傾向として、一般の教養講座的な目的に変化してきていると考えられる。講座の目的と内容について整理し、今後の方向性について検討すべき段階に来ていると考えられる。


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