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ESJ57 一般講演(口頭発表) G2-03

最終退氷期以降の急激な気候変動と八甲田田代湿原泥炭形成量変動の関連性解明:泥炭堆積物中セルロースのδ13C分析による考察

*篠崎鉄哉(東北大・理,国環研・化),箕浦幸治(東北大・理),近藤美由紀(国環研・化),柴田康行(国環研・化),吉田明弘(東北大・植),小池慧子(東北大・理),内田昌男(国環研,化)


現在の地球温暖化による将来の気候変動予測は,人類の繁栄において緊急の課題である.これまで報告されている堆積物コアを用いた過去の気候変動記録は,南北両半球のアイスコア記録が主であり中緯度域である日本における記録はいまだ十分ではない.日本を含む北西太平洋域は東アジアモンスーン気候に属する.アジアモンスーンの供給する水分により,農業が可能となり人々の居住を支えている一方,洪水や干ばつなどの自然災害がもたらされることがある.そこで,過去に起きた自然レベルでの気候変動とアジアモンスーン変動の関係を明らかにするため,本研究では青森県八甲田山田代湿原でコアの掘削を行い,急激な気候変動を記録している最終退氷期を含む過去15500年間の泥炭堆積物中セルロースの安定炭素同位体比(δ13C)分析を行った.

得られたボーリングコアは全長8.8mで主に泥炭から構成されており,コアの基底は十和田八戸テフラ(約15500年前)に対比された.水環境の復元のため泥炭堆積物中セルロースのδ13C測定を行った.セルロースδ13Cは,植物が光合成によりCO2を固定する際の同位体分別により決定される.同位体分別は気孔の開度に依存し,気孔が開いている時(湿潤)に大きく,閉じている時(乾燥)に小さい.つまり,連続してδ13Cを測定することで過去の水環境変動の復元が可能となる.本コアおよび中国北部,チベットにおけるδ13C記録を比較した結果,温暖期に乾燥,寒冷期に湿潤な気候をとることがわかった.これはアジアモンスーンの影響をより強く受ける低緯度帯とは逆のフェーズであることから,アジアモンスーンの影響が緯度帯毎に大きく異なることを示唆している.


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