ESJ57 一般講演(口頭発表) H2-02
*中野大助,小林卓也,坂口勇(電力中央研究所),松本寛(鏑川土地改良区)
カワヒバリガイは淡水に生息する付着性二枚貝で、2006年に環境省から特定外来生物に指定されている。本種は、生活史の中に浮遊幼生期を持ち、成貝になると足糸によって基質に集団で付着する。そのため、発電や水道などの利水施設へ幼生期に侵入し、成長して通水阻害をもたらすなど産業への被害が心配されている。また、高い付着能力や濾水能力を持つことから、在来の生物群集への悪影響も懸念されている。浮遊幼生期を持つカワヒバリガイの定着には、湖沼や貯水池といった止水環境の存在がカギになると考えられているが、止水環境におけるカワヒバリガイの成長や移動についてはほとんど明らかになっていない。
群馬県南西部に位置する鏑川用水では、2005年にカワヒバリガイの侵入が確認されている。現在、鏑川用水の貯水池である大塩湖には、カワヒバリガイが大量に生息している。大塩湖で付着基盤を設置し、定期的に引き上げることでカワヒバリガイの成長および移動に着いて調査した。付着基盤の設置は2008年8月28日に行い、同年10月3日(約1ヶ月)、同年11月27日(約3ヶ月)、2009年2月26日(約6ヶ月)、同年4月24日(約8ヶ月)、同年6月3日(約10ヶ月)、同年9月2日(約1年)にわたって回収を行った。
基盤に付着したカワヒバリガイの殻長は、1ヶ月後は0.5mm(中央値)であったのに対し、1年後には約10mm(同)まで成長し、18mmに達する個体も見られた。また、水温が15℃を下回った期間ではほとんど殻長は伸長せず、水温は成長に大きく影響するものと考えられた。基盤へのカワヒバリガイの付着数は、1ヶ月後から3ヶ月後にかけて増加し、その後も緩やかに増加する傾向を見せた。1ヶ月後には、浮遊幼生の発生が終了していたことから、付着後の個体にもかなりの移動力があることが示唆された。