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ESJ57 一般講演(口頭発表) H2-07

支笏湖沿岸の非意図的外来魚(ヌマチチブ)が底生生物群集に与える影響

東海大 生物理工


湖沼の生態系は閉鎖系の特性上,人為的な環境変化を受けやすい。特に密放流による外来生物の侵入は,在来生物の食いつくしや,在来生物の生態的ニッチを攪乱することで,生態系に及ぼすダメージを指摘される。従来,支笏湖における外来種問題は,沖域のブラウントラウト等の大型魚類が在来種に対する捕食や餌資源の競争排除を中心として調査されており,他水域では調査されていない。しかし近年,発表者らの調査により沿岸域では,ヌマチチブ等の小型外来種が高密度で生息する事が確認された。従来このような小型外来魚は在来魚を直接捕食できず,在来魚と生息場を重複しても競争に弱いため,そのインパクトは低いと推測される。しかし,小型外来魚は在来魚の幼魚期の生息場である沿岸域を重複して利用している。このことは,魚食性や競争力の低い小型外来種が,湖の環境に適応し,なんらかの生物資源を利用することで,在来種の環境を攪乱している可能性を示す。本研究では2007年に行われた小型外来魚の季節と調査地に伴う個体群変動と食性分析を,2008年に行なわれた小型外来魚が湖岸の生態系に与える影響を調べるためエンクロージャーを用いた操作実験の結果を発表する。2007年の個体群調査では総ての調査地点において,ヌマチチブは小型魚類相の中で著しく優占していた。食性分析では,小型魚類の多くは藻類を餌資源としていた。2008年の操作実験では,小型外来魚としてヌマチチブを用いた。エンクロージャー内のヌマチチブの存在は,藻類のクロロフィル濃度を減少させる傾向を示し,底生動物群集の密度のみを低くした。この底生動物群集の密度の変化は,ヌマチチブの補食ではなく,藻類の減少からくる間接的効果と考えられる。本研究では小型外来種は沿岸の空きニッチを利用し分布域を広げたと考えられる。


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