ESJ57 一般講演(口頭発表) K1-04
*高倉耕一(大阪市環科研), 西田隆義(京大・農), 松本崇(京大・生態研セ) , 西田佐知子(名大・博)
外来種によって近縁な在来種が置き換わってしまう現象は様々な分類群で繰り返し観測されているパターンである。野の草花として馴染み深いタンポポ類でも状況は同じで、西日本では在来固有種カンサイタンポポは外来種セイヨウタンポポによって置き換えられている。最近、外来種から在来種への繁殖干渉(外来種から在来種への送粉によって在来種の種子結実率が大きく低下する)が明らかになり、置き換わりの要因として注目されている。タンポポにおける繁殖干渉は在来種衰退の要因となったのであろうか?また、そうだとすると、在来タンポポを保全することは可能だろうか?その場合、保全コストを考慮したうえでどのような手法が最適だろうか?
これらの疑問に答えるため、演者らは野外調査から個体群動態・繁殖干渉についてのパラメータをもとめ、それらにもとづき在来種・外来種の動態を空間構造を考慮した個体ベースモデルとして記述した。このモデルによるシミュレーションでは、繁殖干渉がある場合には在来種は外来種の侵入によって速やかに衰退した。さらに、この過程は土壌のかく乱(株死亡率の増大)によって加速された。このパターンは実際の在来種衰退の状況と極めてよく符合する。また、外来種の除去によって在来種の衰退を防ぐことが出来ることも予測されたが、その効果は除去方法によって大きく異なった。最も効果が高かったのは花期前に外来種を株ごと掘り取る方法であったが、外来種の花だけを一定割合で除去する方法も次いで効果的であった。コストを考慮すると外来種の花茎を摘み取ることが最も効率の良い手法であると考えられた。このように外来種による在来種への繁殖干渉の解明は、在来種衰退の要因を理解するだけでなく、その効率的・経済的な保全手法を考慮するうえでも有用であることが示された。