ESJ57 一般講演(ポスター発表) P2-128
*上田恵介(立教大学・理),那須義次(大阪府病害虫防除所),村濱史郎(株式会社野生生物保全研究所),松室裕之,高木昌興(大阪市立大学大学院理学研究科),広渡俊哉(大阪府立大学生命環境科学研究科),吉安裕(京都府立大学生命環境科学研究科)
欧米では古くから鳥類の巣に生息する鱗翅目昆虫の研究がなされ,マルハキバガ科、ヒロズコガ科,メイガ科など、これまでに13科55種以上の生息が報告されている。しかし、我が国において鳥類の巣に生息する鱗翅目の報告は、これまでにスズメ、ツバメなど5種の鳥類の巣が散発的に調査され、2科6種の蛾についての記録が得られているだけであった。今回我々は,日本列島に生息するフクロウ類(シマフクロウ、フクロウ、アオバズク、リュウキュウコノハズク,オオコノハズク)5種の巣に共生する鱗翅目昆虫相についての調査を行った。琉球諸島の沖縄島においてリュウキュウオオコノハズク、南大東島においてダイトウコノハズク,北海道のシマフクロウ,本州〜九州のフクロウ,アオバズクの巣の調査を行った。その結果、リュウキュウオオコノハズクの巣からは3種のヒロズコガ類、南大東島のダイトウコノハズクの巣からは2種のヒロズコガ類と1種のメイガが,シマフクロウ,フクロウ,アオバズクの巣内からも多数の鱗翅目昆虫が発見された。これらの多くの種は日本未記録種もしくは新種である可能性が高く、このグループの蛾類の多様性を改めて証明するものになった。調べたフクロウ類の巣内は、動物性タンパク質が多量に堆積しているにもかかわらず、腐敗臭もなく、巣内のヒナの生息にとって清潔な環境に保たれていることがわかった。このことから、ヒロズコガ類・メイガ類をはじめとする巣内共生鱗翅目昆虫が、巣内の清掃者として、フクロウに相利共生的な利益をもたらす重要な役割を演じている可能性が高いことが推察された。