[0] トップ | [1] 目次

ESJ58 一般講演(口頭発表) A1-07

都市近郊の里山林におけるNPOや行政による非伝統的管理と生態系サ-ビスからみた林床の多様性との関係

*島田和則,勝木俊雄(森林総合研究所),岩本宏二郎,伊東宏樹(森林総合研究所多摩森林科学園),齊藤 修(早稲田大学高等研究所)


近年二次林の管理の必要性が指摘され,放置林の一部において,行政やNPOなど新しい管理主体によって下刈などの管理が行われるようになってきた。しかし,これらは利用されていた当時の伝統的な管理手法などが必ずしも踏襲されているわけではなく,実際管理形態の差異により多様性の指標となる植物の種数が影響を受けていることがわかっている。しかし,このような非伝統的な管理と生態系サ-ビスとの関係については明らかになっていない。

里山における生態系サ-ビスのうち,送粉は調整サ-ビスのひとつである。この送粉機能については、さまざまな送粉昆虫のうちハナバチの種数が最も多く、送粉の働きはハナバチの種数で測るのが適当であると考えられている。また,ハナバチの種数は林床種数の影響を受けていることもわかっている。そこで本研究では,東京都多摩地方南西部の里山林において,林床の管理形態と,送粉機能と関係の深い林床種数とを比較検討して,旧来の農業利用とは異なるボランティアや行政による現代的な二次林の管理と生態系サ-ビスとの関係を検討することを目的とした。

その結果,送粉機能と関係の深い虫媒の草本種数について管理形態との関係を検討すると,虫媒の夏緑多年草は継続的な管理が現在行われており,しかも10年以上の中断期間がない林分で多かった。また,一・二年草は管理があり,過去に中断期間がない林分で多かった。

虫媒夏緑多年草種数の度数分布による比較では,放置と単発的管理では種数が少なく,伝統的管理では逆に種数が多く,非伝統的管理では種数の少ない林分から種数の多い林分まで出現した。

以上をまとめると,長い間の林床管理によって多様性が維持されてきた里山は,従来の方法を踏まえ,中断期間をおかず継続的な管理をすることが,送粉の調整サ-ビスを低下させないために必要である。


[0] トップ | [1] 目次