ESJ58 一般講演(口頭発表) A1-08
齊藤修(国連大)
国連のミレニアム生態系評価(MA)では,生態系から人々が得る恵みを「生態系サ-ビス」と定義し,生態系サ-ビスの変化がどのように人間に影響するかが検証された。このなかで,生態系サ-ビスは,供給サ-ビス(食糧や水,木材,燃料などの供給),調整サ-ビス(洪水・気候調整),文化サ-ビス(レクリエ-ションや精神的・教育的な恩恵),基盤サ-ビス(栄養塩循環や土壌形成等)の4種類で定義されている。一方,第二次循環型社会形成推進基本計画では,循環資源の性質と地域の特質に応じて,コミュニティ,地域,広域ブロック,全国規模,そして国際的なレベルに至る最適な規模の「地域循環圏」構築が推進されることになっている。さらに同計画では,循環型社会づくりにおいて,自然共生社会形成との統合的な取組の推進が強調されている。本研究では,里山を対象として,里山の各生態系サ-ビスを複数の空間スケ-ルで評価し,インベントリ化を試みた。特に,供給サ-ビスのうち森林系木質バイオマスに着目し,全国,広域ブロック,都府県,市町村の4つのスケ-ルで定量化し,生態系サ-ビス間の相関分析を行い,生態系サ-ビス間の相互関係を解析した。また,得られたインベントリデ-タを地理情報システム(GIS)に取り込んでマップ化した。このようなインベントリとマップは,それぞれの地域における生態系サ-ビスを把握するのに役立つだけでなく,周辺地域の生態系サ-ビスとの関係,生態系サ-ビス間の関係を分析するための基盤となる。最後に,現状での生態系サ-ビス評価のダウンスケ-ルの方法と精度について検討し,方法論上の課題を明らかにするとともに,地域循環圏形成を生態系サ-ビス管理と調和的に進めるための論点と政策的なインプリケ-ションについて考察した。