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ESJ58 一般講演(口頭発表) A1-09

里山におけるシジュウカラの減少

*大堀 聰・黒江 美紗子(早稲田大学自然環境調査室)


持続可能な利用がされなくなり、里山の林は変化した。下刈りや落ち葉かきが行われなくなり、林床にはアズマネザサが侵入した。萌芽再生のための定期的な伐採が行われなくなって、シラカシなどの常緑稚樹が優占するようになった。本講演では林の管理作業放棄に伴う樹高、樹冠、樹種、層構造、立木密度などの林分構造の変化が、里山の鳥類相にどのような影響を与えるのかについて報告する。

調査地である早稲田大学所沢キャンパスは、首都圏の緑の孤島といわれる狭山丘陵にある。キャンパスは水源林に隣接するコナラ二次林に囲まれ、谷戸や草地、小川、ため池などの里山環境が残されている。キャンパスでは1983年から現在まで週1回の鳥類センサスが行われている。

林の管理放棄による植生の変化が鳥類相に与える影響を明らかにするため、長期間の鳥類センサスの結果を解析したところ、最も大きく減少した種は、シジュウカラだった。そこで、繁殖期と越冬期のシジュウカラ個体数の変化を比較した。シジュウカラは繁殖期には巣箱を利用して繁殖する。繁殖期には、センサス記録個体数、巣箱での繁殖つがい数と繁殖成功率、冬期にはセンサス記録個体数を用いた。

繁殖成功率や越冬個体数に影響を及ぼすプロセスについては、餌資源量や採食効率の低下、繁殖期や巣立ち後の捕食圧の増加などが考えられる。なかでも、シジュウカラは、落葉後や開葉前には林床で採食することが知られており、林床の植生密度の増加や低木の樹種変化が餌資源量や採餌効率の低下を引き起こし、その結果として繁殖成功率や冬期の若鳥生残率の低下に至っている可能性が高い。各環境条件とシジュウカラの個体数変化との関係を明らかにすることによって、どのプロセスが個体数変化に大きな影響を与えているかについて考察する。


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