ESJ58 一般講演(口頭発表) A1-10
*三島慎一郎, 神山和則(農環研)
【はじめに】本研究では農業における肥料施用に伴う環境への負の影響に焦点を当て、窒素(N)施用に伴う一酸化二窒素(N2O)発生による温暖化、N施用に伴う地下水汚染ポテンシャルと土壌流亡に伴う河川水の富栄養化ポテンシャルと施肥リン(P)と施肥の余剰による土壌蓄積Pの土壌流亡に伴う河川水の富栄養化ポテンシャルを求め、これらを都道府県別に求めた。そしてDistance to Target法を適用する事により全体でみた環境影響指標を求めた。
【方法】三島と神山(2010)の都道府県別施肥量DBを元に、N2OはIPCC Tier2の方法で、地下水汚染は農業生産で余剰となるNを土壌浸透水量のポテンシャルで除して、N,Pによる河川水の富栄養化ポテンシャルはUSLE式による農耕地からの土壌流亡ポテンシャルと農業生産で余剰となるN,P量に土壌中の可給態N,P量を加えたものから、1990年に関してそれぞれ算出した。これに環境基準・政策上の目標を目的値として重み付け係数を出し、Distance to Target法で環境影響指数に統合した。対象年度は1990年と2005年である。
【結果と考察】N2Oの発生は静岡県で多く、地下水への影響ポテンシャルは香川県で高かった。河川水への影響のポテンシャルは西南日本太平洋側で高く、北東日本日本海側で低かった。環境影響指標は極端に高い静岡・愛知・香川・愛媛・長崎・沖縄と特に低い北海道・秋田・山形・新潟・富山・石川・福井とその他の県に分けられた。特に高い県では、香川県を除きN・Pの流亡が大きな割合を占めていた。一方特に低い県では地下水汚染とN2O排出が主であり、北海道を除くと水田地帯であり窒素・リン余剰自体それほど多くない県であった。環境影響指数低減のためにはN,Pの省施用、Pの土壌肥沃度に依存した施用が必要である。