ESJ58 一般講演(口頭発表) A2-05
*亀山哲(国環研・アジアG ),野原精一(国環研・アジアG),佐藤達明(アルファ水工),藤井良昭(アルファ水工)
東南アジア最大の国際河川メコン川流域では,急激な社会構造の変化に起因する流域開発に伴い,そこに生息する淡水魚類の生息地の変化が大きな問題となっている。特に1980年代以降,上流に建設されたメコンカスケ-ドと呼ばれる一連のダム群は,メコン本流に建設された最初の横断構造物であり,その下流への影響は国際的にも大きな懸念材料である。しかし,社会的背景や流域規模の大きさ故に,特に本流部分においては魚類生息地評価が行われた事例が少なく,具体的な生態系影響評価手法も確立されていない。
本研究では,メコン本流に最初に建設された(1986-1993)漫湾ダムを対象とし,その下流河川部分(タイ北部チェンセン下流,約20km区間)において淡水魚類の生息地評価を行った。2007-2008年の現地調査では魚群探知機(NAVMAN社製TRACKFISH6600)および超音波ドップラ-プロファイラ-(SonTec社製Mini-ADP)を使用し,魚類の生息量・分布情報およびその場の水文物理環境を把握した。また,調査範囲を河川範囲全体に拡大する目的で,数値モデル(DHI社製Mikeシリ-ズ)を用いて一年間の流況を再現した。
生息地評価については,最初に魚群探知機から得られる魚影数を目的変数,同地点の水文物理環境(水深・流速・相対的位置(河岸までの距離/河川幅))を独立変数とする回帰式を求め,それぞれの式の積を計算することで行った。次に,生息適地に関わる独立変数を,水文物理モデルの再現結果に置き換えることにより,魚類生息地の評価範囲を空間的に拡大した。最終的に,水文モデル中のOrthogonal Curviliear Gridに生息適地指数を表示することにより生息適地分布マップを作成した。