ESJ58 一般講演(口頭発表) A2-09
北海道大学 環境科学院
2005年の世界遺産登録直後、知床国立公園を訪れる利用者が急増し、過剰利用による自然環境の破壊や混雑によるレクリエ-ション体験の質的低下、ヒグマなどの野生動物との遭遇などの問題が懸念されてきた。このような問題を緩和するために、立ち入り人数など細かい制限・規制を行うことが求められている。そこで、本研究では、今までにも問題となってきた車両による渋滞と、2011年より導入される認定ガイド制度とマイカ-規制の変更の関係に着目し、交通量のシミュレ-ションモデルを開発し、規制が混雑に与える影響を定量的に予測し、今後の知床国立公園利用・管理に役立てることを目的とする。
モデルでは、知床国立公園内の道路を7.5mの区画で区切り、1区画あたり最大1台の車両が入ることができ、前の区画にすでに車両が入っていると前進できず行列が生じると仮定する。ウトロから出発し、2つの主な観光地である知床五湖とカムイワッカ湯の滝へ向かう分岐点に遭遇する。いずれの観光地を選択するかは、社会調査より推定された選択確率に基づいて決まると仮定する。その他に、それぞれの観光地の駐車可能量と平均滞在時間、車両が知床国立公園の入り口にあたるウトロに入ってくる確率をパラメ-タとして使用する。
このモデルの整合性を確認するため、2009年交通量調査より推定されたモデルのパラメ-タ値を用いて、観測された交通量パタ-ンを再現できるか検討した。その結果、渋滞には午前と午後にピ-クが生じる傾向を再現でき、駐車場前の待ち行列長も実測値とほぼ同じ傾向を示した。また、各パラメ-タ値から計算される渋滞解消条件についても調べたところ、合理的な結果が得られ、モデルの整合性が確認された。以上の結果をもとに、認定ガイド制度とマイカ-規制が渋滞に与える影響とその緩和策を検討する。