ESJ58 一般講演(口頭発表) B1-04
杉村 乾(森林総研・国際)
種レベルでの生物多様性保全においては多様性の維持とともに、希少価値が高い種の保護が求められる。そこで、森林性の鳥類種に対して、分布域の大きさから見た希少性と系統的特異性をもとに作成した指標を用いて重み付けし、一定地域で観察される種の集合体としての多様性を評価した。分布域の大きさにもとづく種の評価値はレッドデ-タカテゴリ-のランクと相関する傾向があり、客観的な定量的指標として有用であることが示唆された。これらの指標を用いて2次メッシュ単位で全国規模(総グリッド数2.899)の評価を行ったところ、大半の区域で種数に比例した評価値が得られたのに対し、(a)種数が多い以上に評価が高い地域と(b)希少種が多いことによって同等の種数を持つ地域よりも格段に評価が高い地域を抽出することができた。一方、系統的特異性の高い種がとくに多い地域は抽出できなかった。また、これらの中から評価の高い50グリッドを抽出したところ、希少種の多い島嶼域(南西、伊豆、小笠原諸島)から多くのグリッドが抽出された。相対的に天然林率の高い北海道、東北、中部地方からは比較的多くのグリッドが抽出されたが、人工林率が高い四国、九州からは抽出されなかった。これらのうち保護地域の指定(国立公園等)が含まれているグリッドは半数に満たず、島嶼域や渡り鳥の中継地などに対しても新たな指定が重要であることが示された。