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ESJ58 一般講演(口頭発表) B1-08

富士山亜高山域における標高別のシカ?皮

*竹内亨(電中研・環境),小林卓也(電中研・環境), 梨本真(電中研・環境)


高標高域へのシカの拡大が森林生態系におよぼす影響が危惧されている。我々は、富士山の亜高山域から森林限界付近にわたり、シカによる高密度の剥皮が部分的に存在している事を確認し、調査を進めている。本発表では、富士山3斜面の亜高山帯針葉樹林において、シカによる樹木剥皮状況を調査した結果を報告する。本調査では、南斜面、西斜面、東斜面それぞれに、計20個ずつ(1800?2000 mに7個, 2000?2200 mに7個, 2200?2400 mに6個)の調査プロットを設置し、糞数、胸高直径、剥皮状況(幹及び根の表出部)等を記録した。

南斜面の調査結果では、シカの糞密度は低標高域(1800-2000m)で最も高く、高標高域(2200-2400m)の3倍以上となっていた。一方、幹の剥皮を受けた樹木の密度は、高標高域で最も高い結果となっており、高標高域においてシカの剥皮を受けやすい小径木の密度が高いためと考えられた。各プロットにおいて、剥皮インテンシティ(剥皮を受けた樹木の本数/全樹木の本数)を標高別に比較すると、低標高域が最も高い値を示したことから、剥皮行動の強度は低標高で最も高いことが示唆された。樹種、太さ別に比較すると、胸高直径20cm以下の落葉樹ナナカマド、針葉樹シラビソに剥皮が集中していることが分かった。根の表出部における剥皮の状況を標高別に比較すると、低標高域において太い径の樹木の根に剥皮が多く確認されたものの、高標高域ではほとんど見られなかった。

本報告では、上述した南斜面に加え、西及び東斜面の結果も合わせて報告する予定である。


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