ESJ58 一般講演(口頭発表) B1-10
*佐藤舞子(酪農学園大院・酪農),熊谷麻梨子(酪農学園大・環境),牛山克己(宮島沼水鳥・湿地センタ-),山舗直子(酪農学園大院・酪農)
北海道美唄市に所在する宮島沼は、毎年春と秋にマガン(Anser albifrons)が飛来する渡りの重要な中継地である.宮島沼におけるマガンの飛来数の増加等に伴い,宮島沼周辺圃場ではマガンによる秋撒き小麦への食害問題が深刻化している.
小麦食害の主な要因としては,マガンの好適な食糧資源の落ち籾の枯渇が挙げられるため、小麦圃場における防除器具の効果を高めるためにも、小麦圃場からマガンを誘引する代替採食地の整備が有効な対策と考えられている。代替採食地に関しては、1999年から2005年にかけて予備的な実証試験が行われおり,その結果を受けて2010年に規模を大きくした実証試験が行われたのでここに報告する.
2010年度の代替採食地試験においては,顕著な小麦食害が発生する直前にあたる4月下旬に,宮島沼から半径約1.5km圏内の圃場において,計9箇所(約35ha)に総量約5tの籾を一回散布した.代替採食地の効果を検討するため,散布の開始翌日から,代替採食地を含む塒から約3km圏内の圃場において,一日3回,散布日から9日間 実施した.また,マガンの飛来期間において,マガンの飛来数,塒から約8km圏内の圃場におけるマガンの分布数,圃場の作付け状況,防除器具の設置状況,マガンによる小麦食害の把握調査を定期的に実施した.
調査の結果,代替採食地におけるマガンの利用は,散布の翌日から確認され,散布日から3日目に利用羽数のピ-クを迎え,マガンを効果的に誘引していた.一方で,誘引の効果は短期間であり,広範囲に及ばなかった.各9箇所の代替採食地については,マガンの利用時間帯や利用日数に顕著な差が確認された.
本研究では,大規模な代替採食地の設置による小麦食害の軽減効果を検証し,今後の代替採食地設置事業の方針について検討する.