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ESJ58 一般講演(口頭発表) C2-06

青森県八甲田山地における有効花粉飛来範囲(RSAP)と相対花粉生産性(PPE)の推定.

*中村琢磨(横浜国大院・環境情報),高原 光(京都府大院・生命環境),大野啓一(横浜国大院・環境情報)


近年,北米やヨ-ロッパを中心に定量的古植生復元(Quantitative reconstruction of Past vegetation)と呼ばれる手法が発展している.この手法によって,花粉の飛散・堆積モデルを用いて,花粉量と植生量の相関がそれ以上良くならない距離(有効花粉飛来範囲,Relevant Source Area of Pollen: RSAP)と,花粉生産量を相対化した相対花粉生産性(Pollen Productivity Estimate: PPE)を推定し,過去の花粉組成からRSAP範囲内の古植生の組成を計算することができる.本研究ではより精度の高い客観的な古植生復元の基礎資料を得るため,青森県八甲田山地においてRSAPとPPEの推定を行った.まず,様々な異なる植生の地点で表層堆積物を採取し花粉組成を明らかにした.次に空中写真や既往の植生図から各植生の面積を算出した.これらを花粉の飛散・堆積モデルPrentice-Sugita modelに当てはめ,RSAPと主要な分類群のPPEを推定した.その結果,亜高山帯のオオシラビソ林に囲まれた湿原(平均半径:36m)のRSAPは約590mと推定された.また,PPEはカバノキ属を1.0とした時,オオシラビソ2.4-2.6,マツ属単維管束亜属0.3-0.4,ハンノキ属はほぼ0であった.一方,山地帯の牧場(平均半径:141m)ではRSAPは亜高山帯と同じ590mであった.また,PPEはスギが9.6,ブナ1.5,コナラ亜属0.67,ハンノキ属0.5であった.PPEは亜高山帯では優占種のオオシラビソが最も大きく,山地帯では広大なスギ人工林を反映してスギのPPEが大きかった.このようにPrentice-Sugita modelを用いることで植生と花粉の関係を正しく表現できることがわかった.


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