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ESJ58 一般講演(口頭発表) D2-03

やんばるの外生菌根菌類

*松岡俊将(京大・生態研), 広瀬大(日大・薬), 大園享司(京大・生態研)


菌類は,有機物分解や植物との共生など,生態系において重要な機能を担う.菌根菌は,植物根に感染し,菌根を形成することで植物宿主の効率的な養分吸収に貢献している.北方林において,新規落葉等の土壌表層部の基質では分解菌が,数年分解を受けたリタ-では菌根菌がそれぞれ優占することが報告されている.一方,熱帯・亜熱帯林では,林床の有機物蓄積が少なく,養分の移動が速いため,土壌表層部の基質にも菌根菌が定着していると考えられる.我々は,環境DNA法により,菌根菌と考えられる分類群の菌類が土壌表層部の落葉に定着している可能性を示した.しかし,菌根菌は培養や同定の困難さから,種多様性や森林内での時空間的分布といった基本情報がほとんど存在せず,熱帯・亜熱帯林における菌根菌の重要性は未だ分かっていない.本研究では沖縄県本島北部の亜熱帯林(やんばるの森)における外生菌根菌類の多様性を解明することを目的とし,子実体(きのこ)を対象に調査を行った.

調査地にプロットを設置し,2009年4月から3カ月おきに,計8回調査を行った.子実体は,フィ-ルドで巨視的形態に基づきタイプ分けを行った.タイプごとに出現したプロットを記録し,出現頻度を求めた.各タイプのrDNA塩基配列を決定し,デ-タベ-スと比較することで同定を行った.その結果,合計69タイプの外生菌根菌類の子実体が得られた.子実体の発生は9,10月に集中しており,中でもイグチ類が頻度・多様性ともに高かった.得られた塩基配列はデ-タベ-スに登録されていない配列も多く,未記載種・日本新産種が存在する可能性が考えられる.今後は,時空間的分布を調べるため,菌根を対象とした解析や,養分の溶出量が異なる様々な土壌基質間での菌根菌類相比較をメタゲノムにより行う予定である.


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