ESJ58 一般講演(口頭発表) E1-06
*安東義乃,内海俊介,大串隆之 京都大学生態学研究センタ-
同じ餌種を利用する寄生蜂・捕食者ギルドにおいて、ギルド内捕食とは、寄主内の寄生蜂未成熟個体が寄主と共に捕食者に捕食されることである。このギルド内捕食がおこる場合、寄生蜂はそれに対する回避戦略として、産卵時の寄主選択だけでなく産卵後においても寄主の行動を操作している可能性が指摘されている。寄生されたアブラムシの行動や植物上の空間分布が未寄生のアブラムシと異なることはよく知られているが、この変化がギルド内捕食を回避する機能を果たしているかを検討した研究はほとんどない。
本発表では、寄生蜂アブラバチによる寄主セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの寄主植物上での空間分布の変化が、このアブラムシの主要な捕食者のナナホシテントウ成虫からの回避として機能するかについて調べた結果を報告する。野外および室内での操作実験から、未寄生アブラムシは植物の先端部の茎や葉の表に定着するが、寄生されたアブラムシは葉の裏に移動した後マミ-を形成することが分かった。捕食実験より、ナナホシテントウ成虫は、未寄生アブラムシ、寄生アブラムシ、マミ-のいずれも捕食することが分かった。また、未寄生アブラムシとマミ-を選択させた実験では、テントウムシ成虫は未寄生アブラムシに対して強い摂食選好性を示したが、未寄生アブラムシを捕食してしまうとマミ-も捕食した。ナナホシテントウ成虫は、未寄生アブラムシとマミ-が茎先端や葉の表にいる場合にはどちらも捕食するが(捕食率はそれぞれ89%と86%)、葉の裏にいる場合には捕食率が低くなった(捕食率はそれぞれ0%と10%)。これらの結果から、アブラムシの寄生蜂は、寄主の行動を操作してナナホシテントウ成虫が見つけにくい場所に定着させることにより、テントウムシによるギルド内捕食を回避していることが示唆された。