ESJ58 一般講演(口頭発表) H1-03
*源利文(地球研), 山中裕樹(龍谷大・理工), 本庄三恵, 川端善一郎(地球研)
淡水域における生物多様性の喪失は深刻な問題となっている。そのため淡水域における生物相のモニタリングは非常に重要であるが、モニタリングには多大な労力が必要である。また、希少種などのモニタリングにあたっては非侵襲的な手法が求められる。そこで我々は淡水域における魚類の効率的かつ非侵襲的なモニタリング手法として環境DNAを用いた魚類相把握法を提案する。環境水中にはさまざまなDNAが大量に含まれている。我々のこれまでの実験でも、湖水などの環境水中には魚類のDNAが大量に含まれていることが明らかになった。本研究では、環境DNAを用いた魚類相把握法の可能性を見極めるため、水槽実験を行った。滋賀県内の河川で採取した魚類を用い、(A)カワムツのみの水槽、(B)カワムツ、メダカ、ブル-ギルの水槽、(C) カワムツ、メダカ、ブル-ギル、ドンコ、ギギの水槽を用意した。25℃で2日間飼育した後、各水槽の飼育水からエタノ-ル沈澱法でDNAを回収し、市販のDNA精製キットによる精製を経て、飼育水中のト-タルDNA溶液を得た。ミトコンドリアのチトクロ-ムb領域を標的とした縮退プライマ-を使用してPCR増幅したDNA断片をクロ-ニングし、各クロ-ンのシ-ケンシングを行った。その結果、(A)の飼育水DNAからはカワムツのみ、(B)(C)の飼育水DNAからはそれぞれ水槽に入れた3種あるいは5種の魚と一致するシ-ケンスが得られた。このことは、水を診断することで、そこにどんな魚がいるのかを把握することが可能であることを示している。