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ESJ58 一般講演(口頭発表) H2-08

ブナ実生と光環境?生長量とササ稈密度

*西本 孝,岡山県自然保護センタ-


ササ型林床のブナ林では、ブナ実生はササに生育を妨げられるため、多くが発生から数年以内に枯死してしまう。実生の定着過程を長期間追跡することによって新しい事実が明らかになってきた。実生が定着する条件について、ブナ実生の生残や生長量と光環境との関係について検討した。

調査区は岡山県北部の中国山地にある若杉原生林と毛無山に残存する標高1000m付近のブナ林内に設定した。若杉原生林ではブナ実生の生残とササ稈密度との関係を、毛無山ではブナ実生の生長量(材積量)と光環境(日平均積算光量子量)との関係について調査した。

若杉原生林では、当年生実生がササの下にも多数発生したが、時間の経過とともに生残する個体は減少しチシマザサの葉層を超える個体数が極端に少なくなっていた。実生はササ稈密度の低い場所に集中していたが、長期間生残する個体がササ稈密度の高いところに偏っていた。ササ稈密度はブナ樹幹下では低く、ミズメ、ホオノキの樹幹下では高くなっていた。光環境はササ稈密度が高くなるにつれて悪化したが、ササ稈密度が4-10本m?2のあたりではほぼ一定となっており、この密度のところで長期間生残する稚樹が見られた。

毛無山では、実生が生き残ったのは閉鎖林冠下、ギャップとも登山道沿いでササが刈り取られる場所であった。光環境は閉鎖林冠下、ギャップとも5月上旬が最も良好で5月下旬以降は暗くなり、閉鎖林冠下ではごくわずかな光が届く程度であったが、ギャップでは比較的良好であった。生長量を春季と夏季とに区別して同時期の光環境との関係を見ると、閉鎖林冠下の場合、生長量は春季の良好な光条件下では必ずしも多くなかったのに対して、夏季の弱光下では光環境との正の相関関係が認められた。ブナ実生は春季の光が生長にはあまり利用できず、夏季の弱い光を利用してわずかに生長しながら長期間生き残る戦略をとっていると考えられた。


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