ESJ58 一般講演(口頭発表) I1-10
伊藤健二 (農環研・生物多様性)
特定外来生物カワヒバリガイは近年各地の河川や湖沼に分布を拡大し、水路や貯水地などの利水施設網に侵入し一部地域では通水障害や悪臭などの被害が発生している。しかし、これらの利水施設を対象とする系統的な調査は十分行われておらず、その分布実態や高密度になる環境条件などは明らかになっていない。千葉県北東部に位置する東総用水は農業用水・水道水を供給する目的でつくられた総延長約37 kmの利水施設網であり、2008年に取水施設においてカワヒバリガイの新たな発生が確認されている。これら利水施設網におけるカワヒバリガイの分布実態の把握と発生条件の探索を目的として、2010年6-10月に用水に付随する小規模貯留施設(以下、ファ-ムポンド)16地点、沈砂池・調整水槽等の施設3地点の計19地点に稚貝付着トラップを設置し、調査地点毎の加入密度と環境条件の調査を行った。調査の結果、カワヒバリガイは侵入経路と考えられる貯水地(以下、侵入地点)から19 km離れたファ-ムポンドにまで分布を拡大していること、定着板への加入密度が高いファ-ムポンド(付着密度516個体/400 cm2)が侵入地点から17.6 km離れた地点にあることなどが明らかになった。侵入地点から調査点までの距離と加入密度・発生の有無との間には明瞭な関係が見いだせず、調査点間の加入量の差は調査地毎の環境条件の違いに起因するものと考えられた。