ESJ58 一般講演(口頭発表) I2-02
*土田浩治(岐阜大・昆虫生態)
侵入生物は、侵入の過程で経験するボトルネックにより、遺伝的多様性を減少させる例が報告されている。一方、複数の独立した侵入により、かえってその多様性を増加させている例も知られている。フタモンアシナガバチは1979年にニュ-ジ-ランドに侵入が確認されており、北島を中心に分布している。今回、ニュ-ジ-ランド個体群(NZ)と日本個体群(JP)の遺伝的多様性を核DNA(マイクロサテライト7遺伝子座)とmtDNAで調査・比較したので報告する。
mtDNA変異では両個体群間で重複していないハプロタイプが観察され、日本以外からの侵入もあったことが推察された。また、核DNAでは、NZにはJPに見られた対立遺伝子が消失する傾向が認められ、侵入に伴ってボトルネックが働き多様性を消失したものと考えられた。さらに、NZでは2倍体オスや3倍体メスがJPより高頻度で観察され、ボトルネックによって性決定遺伝子座の多様性も消失していることが示唆された。また、NZに比較的近い遺伝的組成を持つ個体は九州・四国地方に分布していた。以上のことから、NZ個体群は、複数の国や地域からの独立した侵入と、各侵入に伴うボトルネックによって成立したものと考えられた。