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ESJ58 一般講演(口頭発表) I2-04

アリ植物オオバギ属の幹内に共生するカイガラムシ類の寄主選好性:核DNA系統樹を用いた検証

*上田昇平(信大),Quek S.-P.(ハ-バ-ド大),Gullan S. P.(カリフォルニア大),近藤拓正(コロンビア大),市岡孝朗(京大院),村瀬香(東大院),市野隆雄(信大)


熱帯アジアにおいて,アリ植物オオバギ属,シリアゲアリ属およびヒラタカタカイガラムシ属は緊密な相互依存関係を結んでいる.オオバギ,アリおよびカイガラムシの分子系統樹の比較から,アリのオオバギに対する寄主選好性は高いが,カイガラムシのオオバギおよびアリに対する寄主選好性は低いことが明らかになっていた.しかし,これまでのカイガラムシの分子系統樹は,単一のミトコンドリア遺伝子を用いたものであり,その一部が形態に基づく種分類と一致しないことから,これまでのカイガラムシの寄主選好性は過小評価であるということが指摘されていた.本発表では,核DNA系統樹を用いてカイガラムシのオオバギおよびアリに対する寄主選好性を再検証し,カイガラムシの寄主選好性を決定する主導権を握るのはオオバギとアリのどちらなのかを明らかにする.我々は,熱帯アジアの11ヶ所で19種のオオバギから採集された155個体の共生カイガラムシを用い,2つの核DNA遺伝子を用いた分子系統樹を作成した.得られた分子系統樹は高い支持率の9つの系統に分かれ,それぞれの系統には単一種のカイガラムシが対応した.この系統樹を用いて,カイガラムシのオオバギおよびアリに対する寄主選好性を検証したところ,カイガラムシのオオバギに対する寄主選好性は高いが,カイガラムシのアリに対する寄主選好性は低いこと,さらに,カイガラムシの寄主選好性はオオバギの幹表面の形質に制限されることが明らかになった.これらの結果は,カイガラムシの寄主選好性を決定しているのは植物種に対する選好性であることを示している.


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