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ESJ58 一般講演(口頭発表) I2-06

植物-送粉者ネットワ-ク構造の地理的パタ-ン

*酒井 章子(地球研), 徳永幸彦(筑波大・生命環境), Arndt Telschow (Helmholtz Centre for Infection Research, Germany)


植物−送粉者系は、もっともよく研究されてきた生物間相互作用の一つである。かつては、相互作用相手への特殊化が強調されていたが、実際には特殊化の程度には種間で大きな変異がある。熱帯では特殊化した関係が多い、海洋島では極端なジェネラリスト送粉者がみられる、といった地理的変異も示唆されている。しかし、このような変異について統一的な説明はない。本研究では、寒帯、温帯、熱帯、山地、海洋島から得られた50の群集のデ-タを使い、植物−送粉者関係の地理的変異とその要因を議論する。

まず、群集ごとに、植物、送粉者双方について特殊化の程度(相互作用相手の種数の平均値)を調べたところ、地域間差は見られなかった。次に、特殊化の程度のばらつきに差が見られるか、相互作用相手の種数の均等度を用いて調べた。その結果、動物と植物の均等度の間に負の相関があり、熱帯と海洋島で動物の均等度が低く、植物の均等度は高かった。

著者らは、均等度にみられた変異は、送粉サ-ビス及び花資源の需供バランスと関係があると考えている。植物にとって、スペシャリストの送粉者の方が送粉効率の点で望ましいが、送粉サ-ビスが十分あるときにのみ、植物は選り好みでき、送粉者の均等度はあがる。一方、花資源が十分あれば、送粉者は採餌効率の高い植物だけを訪れる。植物間の競争が激しい場合、植物がさまざまな送粉者の採餌効率を同時にあげるのは難しいので送粉者は限られる。その結果、植物の均等度はあがる。

この仮説が正しければ、熱帯や海洋島では送粉サ-ビスが、温帯では花資源が不足していることになる。これは、熱帯での「奇妙な」送粉システムの進化、温帯の学習を必要とする複雑な花形態など、送粉システムや花の形質の地理的変異とも矛盾しない。


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