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ESJ58 一般講演(口頭発表) I2-08

植物間コミュニケ-ションがsagebrush (Artemisia tridentata) の実生の生存および食害に与える影響

*石崎智美, 大原雅 (北大・院・環境科学), 塩尻かおり (京大・次世代), Richard Karban (UC. Davis, Department of Entomology)


植物にとって、食害の影響はその強さや頻度のみならず、食害を受ける植物の生活史段階によって異なると考えられる。特に、実生や幼個体への食害は生存率や成長速度を大きく減少させるため、これらの生活史段階における食害回避はその後の生存と繁殖に重要である。本研究の対象種であるsagebrushは、食害により葉が傷つくと強い匂い(揮発性物質)を放出し、自らの防衛反応を誘導する。また、この匂いは近くに生育する無傷の他個体の防衛反応も誘導することが知られており、植物間コミュニケ-ションと呼ばれる。これまでの研究で、成熟段階のsagebrushでは、個体サイズがより小さい個体ほど匂いに対する感受性が高く、防衛反応を強く誘導することが示されている。しかし、より早い生活史段階の実生や幼個体における防衛反応と植物間コミュニケ-ションの関係は明らかになっていない。そこで、本研究は、植物間コミュニケ-ションが実生や幼個体の生存や防衛反応の誘導に影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的として行った。

まず、野外で一斉に発芽した当年性の実生に対して、隣接する成熟個体の葉を切除し匂いに暴露する処理を5月に行った。その後、7月および9月に生存数を測定した結果、匂いを暴露させなかった無処理の実生にくらべ匂いに暴露した実生の生存率が高かった。また、高さ10cm以下の幼個体に対しても同様の暴露処理を5月(展葉期)に行い、9月(落葉期)に食害を受けていた葉の枚数を測定した。その結果、匂いに暴露した幼個体で食害がより少ない傾向が見られた。以上のことから、sagebrushにおける植物間コミュニケ-ションは、生活史段階初期の実生および幼個体において、生存率や防衛反応を高める働きをしていることが示された。


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