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ESJ58 一般講演(口頭発表) I2-12

多様な宿主に由来する褐虫藻とシャコガイ幼生との共生

栗原健夫*, 山下洋, 山田秀秋(水産総合研究セ), 井上顕(沖縄県水海研セ), 小池一彦(広島大)


■目的:シャコガイ科はサンゴ礁域に住む貝類で、体内の褐虫藻から光合成産物を得て生きている。本科の浮遊幼生は孵化時には褐虫藻を持たず、海水中の褐虫藻を取り込んで初めて共生関係を結ぶ。海水中には、シャコガイ科だけなくサンゴ類やイソギンチャク類などが放出した褐虫藻も多く浮遊しており、どの褐虫藻と本科の幼生が共生にいたりやすいか不明である。そこで、さまざまな宿主に由来する褐虫藻をシャコガイ科幼生に与え、共生率(外套膜にまで褐虫藻を増やしている幼生の数÷全幼生の数)を比べた。また、共生成立後の本科幼生の生残・成長率も褐虫藻の由来宿主の間で比べた。

■方法:ヒメジャコまたはシラナミの人工孵化幼生に、同一種、同科の異種、イソギンチャク類、サンゴ類などの成体から抽出して培養した褐虫藻を投与した。これらを水温約29℃で飼育し、約17日齢での共生率を求めた。計5試行を設け、うち1試行では、共生成立したヒメジャコ幼生をさらに1カ月間飼育して、生残・成長率を褐虫藻の由来宿主(ヒメジャコ、セイタカイソギンチャク)の間で比べた。

■結果と考察:共生率は5試行中4試行で同一種由来の褐虫藻において最大となったが(試行ごとの平均共生率は22, 15, 7, 6, 3%)、他種由来の褐虫藻においても近い値を示した(17, 6, 5, 5, 3%)。共生成立後のヒメジャコ幼生の生残率・平均成長率は、ヒメジャコ由来褐虫藻(75%、217μm/月)とセイタカイソギンチャク由来褐虫藻(80%、251μm/月)とで近かった。以上から、シャコガイ科幼生は同一種由来の褐虫藻とやや高い確率で共生しつつ、他種由来の褐虫藻とも共生可能であり、海水中の多様な褐虫藻を「保険」として利用できると推察した。


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